セミナーレポート2「東京都の介護福祉施策はこうなる!」

■東京都が推進する政策の方向性

令和2年2月12日から14日まで東京ビッグサイトで開催された東京ケアウィーク2020で多くの介護事業者および関係者にとって興味深い専門セミナー中が多数開催されました。その中から特に気になったセミナーの内容を自分の感想も交えてレポートします。

講師の先生は現在、東京都議会議員で東京都の厚生委員会に所属し、議員になられる前には一般企業において介護人材確保の事業の新規立ち上げを行い、介護事業所を1000箇所以上訪問なさっている先生から説明を頂きました。

まずは共通認識を持つということで東京都の高齢者環境に関する説明がありました。東京都の高齢者人口(65歳以上人口)は311万人で全国1位であり、人口規模は“京都府”総人口(261万人)よりも多い人口であること。高齢者対策予算として2000億円計上していること。高齢者人口は今後も一層増加を続け、2025年には23.7%、2030年には24.7%と4人に1人は65歳以上の高齢者という時代を迎える見込みであること。そのような現状の中で東京都が推進する政策の方向性は①健康寿命の延伸、②介護人材の確保と定着率、生産性の向上、③地域力の向上であるとのことでした。

■健康寿命の延伸と生活支援

健康寿命を延伸していくことは介護保険給付費をはじめとする高齢者の社会保障予算の抑制につながることになるので東京都にとっても強く推進していく政策とのこと。健康寿命の延伸には、身体機能の維持と社会生活(仕事、ボランティア、趣味活動)への参加が効果的であると考えており、特に要介護状態になる前段階(フレイル)に注力し、要介護状態にならないように各種支援をしていく。また自立生活をしている方には都立大学を使った「リカレント教育(学びなおし)」の提供や就労支援を行い、さらに東京都の高齢者は単身世帯が多く、身元保証、事故などの危険性から民間賃貸住宅が借りづらいという課題も見えてきたことから住環境整備の整備、移動支援の取組みも開始したとのことでした。また移動支援も大きなテーマで、昨年、池袋において高齢者ドライバーが起こした死亡事故をうけて国に先駆けて安全装置への補助も開始したとのことでした。

■介護人材対策の推進

介護の有効求人倍率は全産業と比較して2.7倍の4.01倍で高水準にある。離職率も高いと言われるが、全産業の離職率が14.6%に対し、介護は15.0%なので離職率の差はあまりないというのが実際である。ただ内訳をみると就職して2年以内に半数が離職していることから定着率をいかに向上させていくかが課題である。しかし全体的に人材が不足していることも事実であることから、「就業希望者を増やす取組み」と「現場の生産性向上」を並行して実践していく必要がある。東京都では介護事業者が介護職員のために宿舎として部屋を借り上げている場合に月額82,000円の補助を支給しており、上限戸数も4戸から20戸まで拡大したとのこと。また独自の奨学金を設けて人材拡大をはかっているところである。また生産性向上を目的として、介護現場にICT機器を導入する場合の補助も昨年度から開始している。今後もICT機器による生産性向上と現場の負担軽減をはかる支援を継続していく方向性である。

■地域コミュニティーの構築支援

東京都は他の地域と比較して地域コミュニティー(自治会など)に加入している高齢者が少ないという特徴があり、地域との関係が希薄であると言われている。その現状を踏まえて地域コミュニティーを構築を支援する取組を行っていくとのこと。まずは2030年までに地域のコーディネーターを中心として1000ヶ所の各世代が集える“居場所”作りを行う。既に都営住宅に『おとな食堂』を開店し集いの場として機能させている。また30年以内に70%の確率で発生するといわれている首都直下地震および風雨にそなえて防災への対策として防災計画の策定支援や非常用電源確保にたいする助成などを行っている。

■最期に(私の感想)

東京都は高齢者人口が多いうえに、生産年齢人口の減少に伴い、高齢化率が急速に進展する地域であることから先駆的な取組みを実施しています。背景に潤沢な行政予算があるとはいえ、この取組が一定の成果をあげて他の地域に拡がっていけばよいと考えます。

やはり一流の先生の話をリアルタイムで聞けるというのは大変参考になります。是非皆さんも次回は会場にお越しになってリアルタイムで最新情報を得て下さい。

株式会社シェアサポート(Share Support)

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