介護現場には、「この人に聞けば何でも分かる」という職員がいます。
利用者さまのことをよく知っている。
難しいケースにも対応できる。
他の職員が困っていると、すぐに答えを出してくれる。
とても頼りになる存在です。
ところが、その人が休むと……
「……どうしましょう?」
突然、現場が静かになる。
これは「専門性」でしょうか?
それとも「属人化」でしょうか?
実は、この二つは似ているようで、かなり違います。
属人化とは、「その人しかできない」状態です。
その人がいなければ仕事が進まない。
その人だけが知っている。
その人の頭の中に、重要な情報がしまわれている。
いわば、「歩くマニュアル」です。
しかも、本人が休暇を取るとマニュアルも一緒に休暇を取ってしまいます。
一方、専門性とは、その人が持っている知識や経験が、より深く、広く、質の高い対応につながっている状態です。
基礎的なことは、多くの職員が知っている。
そのうえで、その人にはより深い知識や経験があり、さまざまな状況に対応できる。
ここまでは「属人化」と似ています。
決定的に違うのは、その専門性を組織の財産として展開できるかどうかです。
例えば、ベテラン職員の経験を聞き取り、判断のポイントを整理する。
事例として共有する。
業務標準書や研修に反映する。
新人でも基本的な対応ができるようにする。
そうすれば、その人の経験は、その人だけのものではなくなります。
専門性が、組織全体の力になるのです。
「○○さんがいるから大丈夫」ではなく、
「○○さんがいなくても、○○さんの知識を活かして対応できる」
これが、専門性を組織の財産に変えるということです。
もちろん、すべてを標準化すればいいわけではありません。
専門職としての経験や判断力まで、チェックリスト一枚に押し込める必要はありません。
大切なのは、個人の経験を奪うことではなく、個人の経験を組織に残すことです。
生産性向上というと、「人を減らす」「仕事を早くする」と考えがちです。
でも、本当に大切なのは、
「一人の力を、みんなの力に変えること」
なのかもしれません。
「○○さんがいないと困る人」から、
「○○さんがいたから、みんなができるようになった人」へ。
属人化を専門性へ。
そして専門性を、組織の財産へ。
これも、立派な生産性向上です。
※noteにも掲載しています。
https://note.com/mirai_smile_labo/n/n8eedca805b4f
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